目次
母が認知症とわかった時に、先々母がどのようになるかもわからず、最後まで在宅で介護するということがどういうものか、また可能なのかの想像もできませんでした。
ただ、とにかく出来るところまで在宅で介護してそれが難しくなれば、特別養護老人ホームなどへ入所という選択をするのだろうかとぼんやりと思い、実際申し込みもしました。
結局、入所することなく、介護を続けていく中で必要なことを学び、最後まで在宅介護を全うすることが出来ました。
介護サービス
在宅介護は、自宅で医療や介護に関わるサービスを受けることができます。
介護サービスを利用するにはまず、お住いの市区町村の窓口で「要介護認定」の申請をして、要介護度の判定をしてもらいましょう。
介護度に基づき、どのサービスをどれだけ利用できるかを、ケアマネージャーに計画書(ケアプラン)を作成してもらい、サービスの利用が開始されます。
申請の大きな流れ

認定調査の質問事項等
- 名前、住所、何月何日か等
- 家族が日常生活で困っている事等
- 立位保持や歩行、関節の拘縮等身体症状の確認
調査後審査を経て介護度認定
- 要支援1~2
- 要介護1~5
介護度によって月にどれぐらいのサービスを受けられるかや、料金が変わります。詳細はこちら
母(要介護5)の例
サービス名 | 回数 | 月額 | 備考 |
訪問入浴 | 週2回(月7~8回) | 約10,095円~12,980円 | |
訪問リハビリ | 週2回(1回2単位40分) | 約5,273円~5,902円 | |
訪問看護 | 週1回 | 約2,202円~3,051円 | 看取りの段階に入ってからは毎日2回 |
往診 | 2週間に1回 | 約5,830円~6,720円 | 医療保険適用(介護保険ではない) |
福祉用具レンタル | 必要な時まで毎日 | 3,446円 | ベッド、褥瘡予防クッション |
1カ月の費用 | 約26,846円~32,099円 |
※デイケアやショートステイを利用していた時は、上記とサービス内容は違います。
サービスの内容はその時々で変更できます。介護度も状況の変化により、次の認定時期を待たず介護認定の申請することが出来ます。まずはケアマネジャーに相談してみて下さい。
メリット
デメリット
- 休みがない傾向にある
サービスの組合せで休みを取ることも可能。ケアマネジャーへの相談をお勧めします。 - 精神的、身体的負担が大きい
身体的負担に関しても、ケアマネジャーへの相談をお勧めします。
精神的負担に関してはで認知症の症状の中で詳しくお伝えします。
在宅介護での問題と、解決の工夫
排泄について
トイレの問題は介護にはつきものです。
オムツを付けるまでが一番大変かもしれません。
母の場合、オムツにしてから、時間を決めてトイレ(ポータブルトイレ)へ誘導するようにすると、その時間まで我慢してトイレで用を足せるようになりました。便でオムツを汚すことはほぼありませんでした。
以下は私が気を付けた事やコツ等です。
コツ
- 排尿のコツ➡尾てい骨のあたりを指でくすぐる。
- 排便のコツ➡尾てい骨のすぐ下あたりをげんこつでトントンと叩いて刺激する。
気を付けたこと
- とにかく清潔を保つ。
- オムツが汚れたら、なるべく早く交換する。
- オムツ交換時はその都度お湯で陰部や臀部を洗う。
※ペットボトルに洗浄用のお湯を入れ、蓋にキリなどで穴をあけたものをシャワーのようにして使用。 - 時間を決めてトイレへ誘導。
※ルーティン化する。母の場合、日中5~6回。体のリズムが出来たのかオムツを汚すことはほぼ無く。 - 便秘予防にカマグ(酸化マグネシウム)を服用。
※便の状態によりカマグの量を調節。ほぼ毎日便通あり。便秘になって下剤を使うより負担はないと思います。
歯の手入れ
健康な歯でなんでも食べられ、きちんと歯磨きなど口腔ケアができればそれが一番いいと思います。
ただ、母は数本の歯だけが残り入れ歯となりましたが、介護中に思ったことは、歯を失って入れ歯になることは必ずしも悪いことではないということでした。

- 入れ歯を洗うだけで良い。但し歯ブラシできちんと磨く。
- 口の中は口腔ウエットティッシュやスポンジなどで拭うだけでよい。
- 歯があると歯や歯茎の管理が難しい。
※歯磨きを嫌がったり、機嫌が悪くなったりする為。 - 口腔内の清潔が保てないと、虫歯、歯槽膿漏などになってしまう。
※口腔内の細菌がもとで誤嚥性肺炎などのリスクも上がる。 - 虫歯や抜歯など、口の中の細かい治療の指示が理解できず難しい。
※口の中の綿がのどに詰まる危険、機械で舌を傷つける危険が懸念される。 - ただ入れ歯は歯茎が痩せると合わなくなってしまうので調整が必要になる。
※訪問歯科で調整は簡単にできるが、歯茎で赤くなっている部分がないかなど確認が必要。
※ぴったりよりは少し余裕があった方が着脱が楽。(多分本人も)
肌トラブル(褥瘡含む)
褥瘡は一度出来ると治りが悪いので、一か所に圧がかからないよう予防する事が大切です。
※右下の図は褥瘡が出来やすい部分を示した図です。

- 座る時は座面に褥瘡予防のクッション等を使用。
※母の場合はロホクッションをレンタル。 - 寝るときは自動体位交換機能の付いたマットをベッドで使用。
※圧を分散して体の向きも自動で変えてくれるので、夜中の体位交換が不要。 - 長時間同じ姿勢を取らせず、立たせるなどして圧を解放する。
※立たせた時にポンポンと軽く座面に接地していたお尻をたたく等するとより血流よくなる。 - 摩擦により皮膚が傷つき褥瘡になる可能性あるので注意が必要。
※ズボンやオムツを上げ下げする際は、お尻との間に隙間を作るようにして肌を擦らないようにする。
母のケース
臀部左側の皮むけと出血
- 処方されたリンデロン(軟膏)を患部に塗り、上からサランラップで保護。
- キズパワーパッド等は粘着力強く、周りの皮膚を傷つける可能性がある。
胸の下の汗疹
- 皮膚が密着している箇所は夏になると汗疹(あせも)が出来やすい。
- とにかく乾燥が大事。胸の下にガーゼハンカチなどを挟む。
- 処方された軟膏を塗る。薬が合えば劇的に改善するが、合わないと悪化する事もある為、季節に関係なく乾燥を心掛ける。
鼠径部の肌荒れ
- オムツが当たる部分が擦れて赤く、皮がむけたようになることある。
- こちらも乾燥を心掛ける。
気を付けているつもりでも見逃すことがあるので、訪問入浴の時などに隅々まで確認してもらいました。肌トラブルは予防に尽きます。
立位保持、拘縮予防
リハビリの早期開始の重要性
- 機能が落ちてしまってからでは回復は困難。
- 特に立位保持で出来ないと、介護者の負担が大きくなる。
- 立位保持が出来るだけで以下のことが楽になる。2~3歩でも足を前に出せると更に楽かつ安全。
- 移乗(トイレやベッド⇄車椅子)
- トイレでのオムツの上げ下げ
- 褥瘡予防のための立ち上がり等
- 自発的な動きがなくなり関節が固まり(拘縮)、リハビリに痛みを伴う。
- 着替えが大変
- おむつ交換が大変
- 拘縮して肌が密着しているところの清潔を保つのが困難
注意すること
- リハビリは専門家(理学療法士や作業療法士)の指導に従って行う。
※自己流では思ったような効果がでない可能性がある。
※場合によっては逆効果となることもあり得る。 - 自宅で出来るリハビリを少しづつでも毎日続ける。
- 無理はしない。(ケガをさせない為にも)
母にした自宅でのリハビリ
- 肩の上方向と横(外)方向への動き
- ひじを伸ばす動き
- 上記2つは着替えをするのに重要な関節。
- 左ひじの軽度の拘縮は、睡眠時脱力している時に伸ばすようにリハビリ。
- 股間節の横(外)方向への動き
- 陰部の洗浄、ベッドの上でのオムツ交換時に重要となる動き。
- 足の筋力保持
- 手引き歩行で歩行練習
- 椅子から立ち上がる動作を10回程度
- 立ったままで数十秒
歩行はくれぐれも無理のない範囲で。歩けなくても立ち上がる練習だけでも立位保持に役立ちます。
母が寝たきりとなったのは、亡くなる前1週間ほどだけでした。それはリハビリを継続したからだと思っています。このことがどれほど私の介護を楽にしてくれたかしれません。
ご本人と介護家族双方のためにも、できるだけ早い時期にリハビリを始められることをお勧めいたします。
食事
食事については、レシピや作り方など「介護食」で詳しく説明しています。
ここでは私が食事介助について気を付けたことについて書き記したいと思います。
- 姿勢を正しくする。
- 椅子に深く腰掛ける
- 上半身は真っ直ぐかほんの少し前傾する
- 顔が上を向かないようにする(意志とは関係なく喉に食べ物が落ちていく)
- 顔は下を向かないようにする(食べ物が口から落ちてしまう、食べ物を送り込めない)
- 足元は膝が直角になるようにする(椅子からずり落ちないよう)
※母の場合、足元に10cm程の高さの台を置き、その上に足を乗せていました。
- 一口の量を多すぎないようにする。
- 飲み込んだのを確認してから次を食べさせる。
- 声掛けをしながら食べさせる。
- 無理に食べさせない。(特に終末期)
睡眠
睡眠については睡眠薬の量を調整したりしましたが、最後までよくわかりませんでした。
- 睡眠薬の服用は、本人と介護家族が取りうる選択のうちの一つ。
- 睡眠薬の種類は色々あるので、睡眠の状況を主治医に相談して処方してもらう。
※寝つきが悪いのか、夜中に起きるのか、早朝に起きるのか、など。 - 夜に体位交換をする必要がないように、自動体位交換がついているベッドをレンタルする。
※特に介護者の睡眠を確保するために必要。 - おむつは夜用リハビリパンツと夜用尿取りパットを利用。




- 夜中に交換はせず、朝起床時に交換。とにかく睡眠を確保。
- 尿取りパットはリハビリパンツにきっちり収まるようにする。オムツからの尿漏れを回避出来る可能性大きい。
- どうしても良質な睡眠がとれない場合、ケアマネージャーさんに相談し、ショートステイ等を検討。
睡眠がとれないと心身ともにきつくなります。私は極度の心配症で母を預けることも、別の部屋に寝ることすらも出来ず、何年もの間ぐっすり眠れなかったため、心身ともにぎりぎりのところまで追い詰められてしまいました。
介護されている方には、私と同じようにならないで頂きたいと切に願います。
費用
費用については、介護度と利用サービス、利用者の収入によって変わります。
介護度が高い→利用できる額が大きい。(その分サービスの利用を必要とするから)
<要支援・要介護度別の月あたり支給限度額>
介護度 | 給付限度額 | 1割負担額 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|---|
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
ただし、介護度が高いと同じ利用内容でも、支払いが多くなるサービスがあります。