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私の長年にわたる介護は2021年3月12日午後12時53分。死亡確認時刻1時05分に終わりました。
このままずっと終わらないのではないか、自分の人生を楽しむだけの健康も、時間もなく、私の一生は介護だけして終わるのではないかと思っていましたが、そんなことはありませんでした。
しばらくは公的手続きや、相続手続きなどで忙しく、それが終わると今度は自分の終活で忙しくしていました。
※終活に関しての詳細はこちら
4月30日 すべての公的手続き、相続手続きを終え口座を凍結。終活を始める。
6月09日 遺言書を作成し法務局に保管。その後死後事務委任契約作成を始める。
7月27日 死後事務委任契約公正証書完成。
母の体調を心配する日々から解放され、これで・・・
いつでも好きな時に外出出来る!
我慢せずに病院に行ける!
急いで家に帰らなくていい!
と、自分の時間を自分の為に使える自由を手にしながらも、介護しかしてこなかった私は何をしたらいいのか、また自分が何をしたいのかもわかりませんでした。
介護中からの気分の落ち込みや体調不良、睡眠障害に食欲不振は解消されることはなく、病院通いは続き、仕事が出来る状態でもありませんでした。
それでも、母を介護したことで、
どんな状態でも母を介護していた頃より大変なことはない!
と、以前のように弱音を吐くことをしなくなりました。
そして父の思いがけない急死で、
明日も元気で生きている保証はない。だから何事も先延ばしにしない!
と思うようになったことで、自分には無理だとあきらめず、とにかくまずはやってみるようになりました。
長年の介護の末に母を亡くしたことで、
ようやく手に入れた自由な時間を無駄にしてはいけない!
何をするにも周りのことを考えて、自分のやりたいことを我慢するのは止めよう!
と自分の中で何を大切にして、どのように優先的に時間を使うかを考えるようになりました。
父の突然の死や、母の長期にわたる介護がなければ、こんなにも時間を大切に思うことはなかったと思います。それは私の価値観を大きく変えるものでした。
両親を亡くし、1人きりの生活で不安や孤独を感じることはありますが、得るものも多かったと感じています。
2021年
6月 MOS Excel 2019合格
7月 MOS Word 2019合格
8月 スポーツジムに入会(10月に退会)
9月 MOS PowerPoint 2019合格
11月 フランス語検定 3級合格
12月 大分由布院へ1泊旅行
とにかく何かをしていなくては落ち着かない感じでした。せっかく自分の時間が出来たのだから有意義に使わなくてはもったいない、時間を無駄にしてはいけない、とその一心でした。
MOS(パソコンの資格)もフランス語も特に必要ではありませんでしたが、何か目的を持ってそのために毎日時間を使うということが、その時の私には必要で、その結果としての受験でしかありませんでした。
公共の交通機関を使って街に出ることは10年以上なく、数カ月間は交通機関を使えずどこに行くにも自転車を使用し、何とか地下鉄を利用できたのは、12月の旅行の時でした。
地下鉄に乗り駅へ行きそのまま汽車で、昔母と二人で行った大分の由布院へ行きました。楽しむためのものではなく、私にとってはリハビリのようなものでした。そしてチケットの予約購入など、私はすっかり時代に取り残されていました。
2022年
1月 長崎へ1泊旅行
4月 北海道札幌へ3泊4日の旅行
5月 MOS Excel エキスパート2019合格
6月 公民館で週3日夕方2時間のパート開始
8月 MOS Word エキスパート2019合格
10月 イギリスへ10日間 29年前にお世話になった大家さんに再開
何もやりたいことがなかった私は、両親と3人で行った思い出の場所で、父がもう一度行きたいと言っていた長崎に行きました。
その後は介護中に目標としていた、29年前のイギリス留学でお世話になった大家さんに会いに行く為、飛行機に乗る練習として北海道に行きました。他にも14時間前後機内で腰痛に悩まされることなく座っていられるように前の年から腰痛治療でリハビリも受けていました。
母が亡くなって1年が過ぎ、仕事もせずにいることに後ろめたさを感じるようになり、近所の公民館で夕方の主に清掃の仕事を始めました。
週3日、2時間程でしたので、ブランクが長かった私にとっては、無理なく働ける丁度良い職場でした。
イギリスも実際のところ本当に行きたかったのかと言えば、必ずしもそうではなく、ただ、不安ということだけで行かない選択をしてしまい、88歳になった大家さんと生きてまた逢うことが出来なかったら、私は自分を許せないだろうと思い、この年にイギリスに行きました。
ロンドンで昔訪れた場所に行き、ようやく私はここに戻ってくることが出来た、母の介護を死ぬことなくやり切ったことでここまで来られた、私は完全に自由なんだと涙が溢れました。
2023年
8月 公民館のパートを辞める(1年3カ月勤務)
9月27日~12月2日 再びイギリスへ6週間。そして約3週間他のヨーロッパ各地を一人旅。
昨年イギリスに行き大家さんに会うという目標を達成しましたが、私にはもう一つ叶えたいことがありました。それは母が好きだったパリに行くことと、母を看取ったあと父と一緒に行きたいと思っていたウィーンに行くことでした。
そして行くなら他の国もまとめて周りたいと思い、お世話になった職場を後にし再び海外へ行きました。
9か国13都市を訪れる大冒険でした。一から自分で計画を立て、バックパックを背負って知らない土地を訪れ、そして日本にいては決して出会わなかった人々にも会うことが出来ました。行く前は不安しかありませんでしたが、それでも一人で何とかヨーロッパ9か国を周り、そしてイギリスでは初めての土地で2週間のホームステイも経験しました。
皆様に向けて
私は仕事をせずに母を介護出来る環境にあり、介護に専念出来たという点では、恵まれていたと思います。両親の年金のお陰で日々の生活が成り立っていました。
ただ、母に使うお金は惜しまず使いましたが、それ以外贅沢することはありませんでした。
苦しい介護の中で、未来があると信じることも、明るい未来を思い描くことも難しいとは思いますが、その先には、私のように第二の人生を楽しむという未来があるということを知って頂けたら幸いです。
介護が終わってもすぐにはその生活になじめないかもしれませんが、時間が解決してくれます。
生活や経済環境は人により異なるので、好きなように出来ないこともあるとは思いますが、少なくともいつも誰かの体調を気にする状況からは解放されますし、どのような生活であっても、誰かの為でなく自分の為に選択できる自由は手に入れることが出来るのではないかと思っています。
私はあの時死なずに乗り越えたことで、今の自由を手にすることが出来ました。
人生を病気の為に楽しむことが出来なかった両親の代わりに、そして何より自分自身の為に、与えられた残された時間を大切にし、やろうと思ったことは先延ばしにせず、日々感謝しながら悔いなくそして楽しんで過ごしていきたいと思っています。