母68歳の年

症状

  • 服を脱ぐ、着る、立つ、座るといった簡単な指示にもほとんど対応できない。
  • 歯をみがこうと言ってもなかなか椅子から立ち上がろうとしない。
  • お風呂に入りたがらないことがある。入れると今度は上がろうとしない。
  • お風呂に入る時、上がる時に下を向いて顔をあげようとしない。
  • ズボン、セーターをすぐに脱ごうとする。(暑いかどうかわからない。)
  • 手袋を足に履いた。靴下を片方の足に重ねて履こうとする。パジャマの上からズボンを履こうとする。
  • 弁当の銀紙を食べようとした。
  • 夕方になると小さな声でぶつぶつ独り言を言う。(何を言っているのか聞き取れない)
  • 絆創膏を貼った傷口を触るので、触らないように言うも、「うん。うん。」と言いながら触り続ける。
  • 用もないのにトイレや台所の電気のスイッチを入れる。
  • 外出から帰ってきたとき、靴のままで上に上がってくる。
  • 鍵をかけ忘れていたところ、一人で家を出て徘徊。追いかけて連れ戻す。
  • 朝、顔を合わせても挨拶をしなくなった。
  • スリッパを片方だけ履いていても何ともない模様。靴をカタカタに履き指摘してもわからない。
  • 部屋を出たり入ったりするので、トイレかと聞くと違うと言いながらすぐトイレに行く。
  • 尿意や便意がわからずもらしてしまうことあるが、オムツは拒否する。
  • トイレに頻繁に出入りし、水を流してすぐに出て、折り返してまた入る。
  • 食事を出してもあまり食べようとしない。箸使いが下手になりこぼしたり、つかめなかったりする。
  • 鏡に向かって話しかける。誰もいないのに目の前にいるかのように話しかける。
  • 独り言を言うが、内容と言葉の使い方は支離滅裂になることが多い。会話は成立しないことが多くなる。
  • 薬を飲むように言うと、何もないのに手の平を口に持っていって飲む格好をする。
  • 薬を飲むことを拒否する(主治医が何ともないから薬は飲まなくてよいと言ったと言い張る)※薬をお茶に溶かして飲ませるようにする。
  • 一日中玄関や廊下にいて、居間の椅子に座ろうとしない。(家庭内徘徊)
  • 同じことを何回も繰り返して言う。特に短いフレーズ「きれいに食べて下さい」等。
  • 段差を極端に怖がり、前に進もうとしない。

症状と家族の心境

前年に引き続きこの年も父による母の症状についての記述は詳細を極めます。

この年の1月に介護判定で要介護3と認定されました。しかし、デイケアを利用したのは5月からで、どこにするかや手続き等は全て父が段取りをしてくれました。
最初は行くのを嫌がることがありましたが、1ヵ月ほど経つと次第に慣れその後はショートステイも利用しました。ショートステイでは環境が変わりトイレが分からず、あちこちの部屋に入ったり、水道の蛇口を開けたりして結局部屋で失禁するということもありました。

自分で歩けていた母ですが、11月頃からは、腰を落とし下を向き前かがみで歩くようになり、更に12月になると、歩行がおぼつかなくなりました。立った姿勢が悪く腰を曲げて左に体が傾くようになり、バランスをとるために介助が必要になりました。また極端に段差を怖がり前に進めないこともありました。

この年に母の母(私の祖母)が亡くなりましたが、お葬式でも何が起こっているかわからず悲しみ泣くこともありませんでした。悲しみという感情は早くになくなっていたように思います。しかし気分にムラがあり、気に入らないことがあると、にらみつけ口をきかなかったり、何か注意をすると人が変わったように文句を言って悪態(父の記述によれば)をついたり、着替えを手伝おうとすると、自分でする!と不機嫌になったりしていました。

そんな母ではありましたが、年金が10万入ったので(実際は入っていない)、私にお饅頭でもかって食べさせてあげようと母親らしい優しさも持っていました。夕方になると私の帰りを待ちわびて毎日のように父に私の帰りはまだかと聞いていたようです。私が「ただいま」と帰宅すると、母は「おかえり」と言えず「ただいま」とオウム返しに言っていましたが、それでも母が私の帰りを喜び、言葉を発することが嬉しく仕事の疲れをいやしてくれていました。一度は、台所に立つ父に、何も出来なくてごめんなさい。自分は死んだ方がいいと言ったこともあったようです。

食事は外食時にお箸をうまく使えなくなり、外食は難しいと、持ち帰りをして家で食べるようになりました。そしてスプーンも裏表がわからず、食事の介助も徐々に増えていきました。
お風呂に関しては私が母と一緒に入って体や髪を洗っていましたが、ある日浴槽から出られなくなったのをきっかけに、その後は利用していたデイケアで入浴をお願いしました。

振り返って思う事

母が怒っていた時のことを考えると、自分の自尊心が傷つけられた時だったように思います。あとトイレや歯磨きなどちゃんとしよう、きれいにしようと言うと、自分が汚いと言われていると思い込み怒ることも多かったです。

この年に急激に体のバランスが悪くなります。この時にもっとリハビリの重要性に気がついていたらと思います。最後亡くなる前の8日間寝たきりになる前まで、支えがあれば立っていることも出来ました。重度の認知症でこの状態が保たれたのは、リハビリの重要性に気付いた時から継続して日常的に足が弱くならないようリハビリに取り組んだからだと思っています。そして母はよく頑張ってくれました。

立位保持が出来るかどうかで介護の負担は大きく変わります。車椅子やベッドへの移乗やトイレでのズボンやリハビリパンツの上げ下げの時など、介護者の負担を大幅に軽減してくれます。リハビリは早めに始めるに越したことはないと考えています。ぜひケアプランを組むときにケアマネジャーに相談をしてみて下さい。
※リハビリについては「在宅介護について」の立位保持、拘縮予防でも少し触れています。詳しくはこちら